STORYストーリー
過去を捨てた元ヤクザの漁師と目の見えない少年との十数年を描く、
年の差を超えた友情と再会のものがたり。
日本海を臨む小さな漁村に暮らす元ヤクザの三浦(舘ひろし)は、漁師で日銭を稼ぎながら細々と生活していた。
ある日、三浦は通学路で白い杖をついて歩く少年の幸太(尾上眞秀)を見かける。弱視を患う幸太を、同級生の子どもたちは、わざと転ばせて笑い者にしていた。幸太は両親をヤクザ絡みの交通事故で亡くし、彼を引き取った叔母はろくに育児もせず、その交際相手からも暴力を振るわれていた。事情を知った三浦は、孤独な幸太にどこか自身の姿を重ね、自分の船に乗ってみるかと誘う。
三浦を「おじさん」と慕う幸太に、自分は刑事だと嘘をつく三浦。純粋に一人の人間として接してくれた幸太に救われた三浦は、「海が見たい」という幸太に視力回復の手術を受けさせるため、ヤクザから金を奪う。そして、三浦は幸太に一通の手紙を残して自首をする。
12年後、出所した三浦はひそかに漁村へ戻って来る。手術が成功して光を取り戻した幸太(眞栄田郷敦)は刑事になってマル暴に配属されていた。警察の資料から「おじさん」の正体を知って葛藤する幸太は、自らの目で真実を確かめるために三浦を訪ねる。
再会し、再び心を通い合わせた二人だったが、そんなとき、三浦のヤクザ時代の弟分である大塚が殺された。先代の寵愛を受けていた三浦を目の敵にする現組長・石崎の仕業だった。石崎の牙は幸太にも迫り、三浦はもう一度拳銃を手に取る。自分よりも大切な人を守るために……。

過去を捨てた元ヤクザの漁師
COMMENT2021年公開の映画「ヤクザと家族」の撮影が終わった時、藤井監督と「必ずもう一度ご一緒したいです」と約束しておりました。その後、東映さん、スターサンズの河村プロデューサー、藤井監督とともに、約3年間にわたり企画について議論を重ねてきました。
紆余曲折しながらも、「深みのある人間ドラマを作りましょう」と河村プロデューサーから一枚のプロットをいただき、即決しました。今回、私が演じたのは、すべてを捨てた元ヤクザという役どころです。 「人の強さとは何か」「誰かのために生きるとはどういうことか」かつて親分に教えられたその思いを愚直に守りながら、漁師として孤独に生きようとする男を演じました。この役は藤井監督と何度も話し合い作り上げたものです。
“強い男”とは何かを考えたとき、石原裕次郎さんや渡哲也さんの生き様が頭をよぎりました。 本作は、日本映画界を代表するキャメラマン・木村大作さんが、35mmフィルムに地震前の能登半島の美しい自然を、役者の心情と共に見事に焼き付けてくださいました。また、地元の皆様の多大なるご協力をいただきながら完成した作品です。現在、能登半島は復興の途上にあり、大変な状況が続いておりますが、 本作を通じて少しでも恩返しができればと願っております。
大スクリーンでこそ味わうべき、一見の価値がある映画です。きっと映画史に残る感動作だと自負しております。ぜひ劇場でご覧ください。
1950年、愛知県出身。1976年に映画『暴力教室』で俳優デビューし、1983年に石原プロモーションへ入社。ドラマ「あぶない刑事」で演じたタカ役で大ブレイクする。同シリーズは映画化もされ、2024年に最新作となる『帰ってきたあぶない刑事』が公開された。近年の主な出演作には映画『アルキメデスの大戦』(19)『ヤクザと家族 The Family』(21)『ゴールデンカムイ』(24)、『鋼の錬金術師』シリーズなどがある。『終わった人』(18)で第42回モントリオール世界映画祭最優秀男優賞、第61回ブルーリボン賞主演男優賞、第42回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。2020年には旭日小綬章を受章している。
刑事。少年時代に三浦に救われた過去がある。
COMMENT2021年に公開された映画『ヤクザと家族The Family』を見て、藤井監督や舘さんとずっとご一緒したいと願っていました。今回そのお二人と同時にご一緒できる機会をいただきすごく気合いの入る現場でした。そしてキャメラマンには木村大作さん。35mmフィルムでの撮影は普段の現場にはない集中力と緊張感でした。僕が演じさせたいただいたのは両親を事故で失い、同時に視力も失った少年が元ヤクザのおじさんに生きる光をもらい、青年へと成長した大森幸太です。
少年時代の幸太を演じられた尾上眞秀くんの生のお芝居や映像を見させていただき違和感のないように幸太を引き継ぎたいと思っていました。そして、その少年時代におじさんから見せられた強さと優しさをずっと追いかけて生きてきたであろう、描かれていない十数年もしっかり青年幸太に乗せて演じられるよう意識しました。誰かのために生きる美しさを感じられる映画になっていると思います。
2000年、アメリカ・ロサンゼルス出身。2019年に映画『小さな恋のうた』で俳優デビューし、映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(21)と『東京リベンジャーズ』シリーズで第34回 日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の石原裕次郎新人賞を受賞。連続ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」(KTV)大河ドラマ「どうする家康」(NHK)などへの出演でも注目を集める。その他の主な出演作は映画『ゴールデンカムイ』(24)『ブルーピリオド』(24)など。2025年7月14日『ババンババンバンバンパイア』、2025年9月5日『カラダ探しTHELAST NIGHT』が公開。
事故で両親を失い、
COMMENT自身の視力も失ってしまった不遇の少年
港のひかりの撮影で一ヶ月くらい能登にいました。僕にとって初めての映画だったので張り切ってやりました。幸太は孤独で目が不自由な役だったので、撮影前に盲学校に行かせてもらったり色々準備をしました。お芝居の中で特に難しかったのは涙を流すシーンでした。
舘ひろしさんはいつも優しくて、撮影が終わったらよく焼肉屋さんに連れて行ってくださいました。
藤井監督や藤井組のスタッフの皆さんにもとてもよくしていただきました。
撮影中寒かった時はみんなであったかくしてくださったりして、嬉しかったです。
撮影最後の日は本当に皆さんと別れたくありませんでした。
キャメラマンの木村大作さんは怖い方なのかなと思っていましたが、すごく優しかったです。
この映画は二年前に撮影したのであまり細かいことは覚えていませんが、試写を見てまだ小さかったなぁと思いました。撮影中は沢山美味しいものを食べました。地元の方にもとても親切にしていただきました。地震や災害の事をとても心配しています。この映画で皆さんに少しでも元気になっていただきたいと思います。
2012年9月11日、東京都出身。2017年に「魚屋宗五郎」の魚屋丁稚与吉で初お目見得。2023年の歌舞伎座「音菊眞秀若武者」で初代・尾上眞秀を名乗っての初舞台を踏んだ。また、2022年にドラマ「ユニコーンに乗って」(TBS)で俳優としてもデビュー。以降、「PCU小児集中治療室」(CX)大河ドラマ「どうする家康」(NHK)「風のふく島」(TX)などに出演。なお、『港のひかり』が映画初出演となった。
青年・幸太の恋人
COMMENT映画"パレード"ぶりの藤井組でした。藤井監督の現場は、作品に関わっている全員で映画を作り上げるという思いがとても強く、映画が完成した時にみんなで味わった達成感は忘れられません。その一員になれたこととても嬉しく思います。私が演じた浅川あやは、しっかりと自分の足で立って生きる途中にいる人物です。幸太と支え合いながらも自立した役どころになるよう演じました。舘さんとは何度か共演していたこともあり、現場で再会を喜び合いました。またこの映画の企画から撮影にかける思いをお聞きし、映画作りの面白さを改めて感じました。そして、今回は木村大作さんが35mmフィルムで撮影してくださいました。興奮しました。現場にはチェック用のモニターもなく、藤井監督が現場にいて、心地よい緊張感の中でのお芝居は、とても贅沢で幸せな時間でした。また、北陸の美しい景色をフィルムに残せたこと、大きな財産になったと思います。一日でも早い復興を、心より願っています。
1997年、沖縄県出身。2013年に『ひまわり~沖縄は忘れないあの日の空を~』で映画初出演。『カツベン!』(19)で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。主な出演作は映画『十二人の死にたい子どもたち』(19)『明け方の若者たち』(21)、『鋼の錬金術師』シリーズ、『パレード』『夏目アラタの結婚』(24)、ドラマ「クロサギ』(TBS)など。連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK)ではヒロインをつとめた。
石崎派の河村組組員
COMMENT一つの娯楽を超え、時代に必要とされ、必然的に生まれる映画があるとしたらば『港のひかり』は正に"それ"だと思います。河村光庸さん、藤井道人監督、舘ひろしさん、木村大作さん、日本映画の要であり、同時に邦画の未来を照らすひかりの様な方々のプロジェクトに参加させて頂けた事は、ご褒美の様でもあり、未熟者の自分には恐ろしさもありました。憧れの更に向こう側にあった木村大作さんのフレームの中で、大先輩方に囲まれながら、八代龍太郎と言う、愛し難き卑劣な人間を演じる人間として、唯一肯定し、愛でると言う、役者業の奇天烈さと旨みを同時に味わせて頂きました。剃り落とした眉毛も含め、斎藤工が本作に少しでも役立っている事を祈るばかりです。2023年の年末、撮影期間中、毎日眺めていた立山連峰の荘厳な山々の景色が今尚目に焼き付いています。北陸地方の復興に対して、自分が出来る事、映画が出来る事に、微力ながら向き合って行く所存です。『港のひかり』が北陸地方の方々のひかりになる事を心から願っております。
1981年、東京都出身。主な出演作に、映画『零落』(23)『碁盤斬り』(24)『新幹線大爆破』(Netflix)『少年と犬』(25)、ドラマ「極悪女王」(Netflix)「誘拐の日」(25)等がある。映画監督として『blank13』(18)にて8冠獲得。移動映画館プロジェクト「cinémabird」の運営や、『大きな家』(24)等のプロデューサーの活動も行っている。
三浦を恩人と慕う河村組の組員
COMMENT今回初めて藤井組に参加させていただきました。能登の清々しい海岸線、路面電車行き交う穏やかな富山での撮影はこころに深く刻まれる、思い出深い風景となりました。撮影の木村大作さんのパワフルな佇まいに身が引き締まり、舘さんと桔平さんというふたりの素晴らしい“アニキ”とお芝居をさせていただいたことは、とても光栄で幸福な時間でした。この映画のフィルムに刻まれた数々の風景が、鑑賞されたみなさんの心にいつまでも響き続けることを切に願います。
1967年、静岡県出身。1989年に石野卓球らと電気グルーヴを結成。1990年代半ばより俳優としての活動もスタートし、『凶悪』(13)で第37回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。その他の主な出演作は映画『アウトレイジ最終章』(17)『宮本から君へ』(19)、ドラマ「サンクチュアリ-聖域-」「忍びの家Houseof Ninjas」「地面師たち」(Netflix)など。公開待機作に『宝島』がある。
青年・幸太が働く警察署の先輩刑事
COMMENT「港のひかり」は、2022年に亡くなられた河村光庸プロデューサーが生前に企画した最後の作品となってしまいました。自分にとって河村光庸プロデューサーは下積み時代からとても応援してくださった恩人の一人です。その恩人の最後の企画に出演できた事をとても嬉しく思っています。この映画が河村さんに届く事、そして多くの皆様に劇場で観てもらえる事を願っております。
1985年、佐賀県出身。格闘家を経て俳優デビュー。自身初の主演をつとめたドラマ「サンクチュアリ-聖域-」(Netflix)で注目を集める。主な出演作に映画『キングダム』『宮本から君へ』(19)『ヴィレッジ』(23)『少年と犬』(25)、ドラマ「インフォーマ-闇を生きる獣たち-」(ABEMA)「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」(TBS)など。「イクサガミ」(Netflix)の配信も控えている。
少年時代に一緒に暮らしていた幸太の叔母
COMMENTこの度、港のひかりで大森美和子役を演じさせて頂きました。美和子は人生の歯車が少しづつ狂ってしまい、何処からやり直せばよいのかさえも見失ってしまった女性です。一件強烈なキャラクターにも見えますが、誰もが持つ弱さを体現している人です。そんな美和子に共感しながら演じさせて頂きました。
今作は震災前の能登を舞台に、地元の方々に沢山の協力を頂きながら、藤井道人さんと木村大作さんのタッグで撮影されました。能登の美しい景色の中で自分の為ではなく、他人の為に生きるというテーマで描かれています。是非劇場でご覧下さい。
1981年、岡山県出身。映画 『ひとよ』『台風家族』(19)で第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。主な出演作に『余命十年』(22)『愛にイナズマ』(23)『劇場版それでも俺は、妻としたい』(25)、ドラマ「インフォーマ」(KTV)「季節のない街」(Disney+)「ホットスポット」(NTV)など。『蔵のある街』(25)の公開を控えるほか、プロデューサーとしても活動中。
マル暴として三浦とも対峙していた元刑事
COMMENT本作で演じた田辺智之はマル暴の刑事。初めての役だったので不安はありましたが、良い役なので楽しんで演じました。舘さんと芝居できたことが嬉しかったです。舘さんは全てが格好いいので眩しかったですね。眞栄田くんは役の真っ直ぐさも相まって、さらに眩しかったです。藤井監督は“繊細”という言葉がぴったりで、あのつぶらな瞳に燃える情熱を感じました。次の仕事も楽しみです…というか使ってください(笑) 木村大作さんとの現場は緊張感に溢れ、身の引き締まる思いで参加していました。勉強になりました。能登の素晴らしい景色と、そこに生きる人々の生き様をぜひ大スクリーンでご覧ください。一日でも早い復興を、願っています。
1949年、埼玉県出身。1973年に劇団四季「イエス・キリスト=スーパースター」でデビュー。退団後もミュージカル、ストレートプレイ、一人芝居と様々な舞台で活躍し、読売演劇大賞優秀男優賞、紀伊國屋演劇賞個人賞など受賞歴多数。映像にも活動の場を広げ、近年の主な出演作には映画『燃えよ剣』『そして、バトンは渡された』(21)『碁盤斬り』『夏目アラタの結婚』(24)などがある。2019年に春の旭日小綬章を受章。
元・河村組の組長
COMMENT演じなくて良いのだ、自然に台詞を言えば良いのだと言う事を此の作品に教えて貰いました。藤井監督の「河村は達観しているんです」の一言が心に響きました。大作さんは「あの頃」と全く変わらぬ物腰でワンカット撮り終える毎に話しかけて下さり心和ませて下さいました。舘さんは物静かなリアクションで全てを語って仕舞う自然体で私を支えて下さいました。皆さんに感謝です。有難う御座います。
1946年、東京都出身。1973年にダウン・タウン・ブギウギ・バンドを結成し、数々のヒット曲を生み出すとともに、作曲家として多数のアーティストへ楽曲を提供する。俳優としても活動し、『駅 STATION』(81)では第5回日本アカデミー賞最優秀音楽賞、助演男優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『罪の声』(20)『痛くない死に方』(21)『BADLANDSバッド・ランズ』(23)、連続テレビ小説「らんまん」(NHK)などがある。
三浦と幸太を見守る漁業組合の会長
COMMENT藤井監督は常に短い単語や名詞での演出でした。じつはそれがとても分かりやすくて有り難かったです。はじめてのお仕事でしたが楽しゅうございました。木村大作さんによる「フイルム」での現場は、とても心地よい活気がありました。その貴重な経験をひとつも漏らすまいという、皆んなのひたすらな姿がとても印象的でした。とても居心地がよかった。私の役は、世話好きな宿屋のおやじさん。能登の風景とカモメの鳴き声が心の奥に染み込みます。能登の復興を心より祈ります。
1948年、兵庫県出身。劇団「自由劇場」退団後、1983年に映画デビュー。『武士の一分』(06)で第30回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。山田洋次監督作品の常連でもある。近作に映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』『35年目のラブレター』(25)、ドラマ「花のれん」(EX)、公開待機作に『ババンババンバンバンパイア』がある。木村大作が自ら監督をつとめた『劒岳 点の記』(09)にも出演している。
かつて三浦が所属していた河村組の組長
COMMENT以前から藤井監督作品を観ていて、人の心の機微に触れる演出を感じていました。そして是非、藤井組で演じてみたいと思ってました。冬の富山の現場に入ると、フィルムのカメラを据えた木村大作さんがいて、その横には藤井監督が穏やかな眼差しで全体を見つめていました。現場の中心には舘さんが重厚かつ凛々しく立っていて、瞬時にこの映画の世界観に導かれました。石崎という屈折した人物を演じましたが、楽しく観て頂けたら幸いです。
1964年、三重県出身。1986年にデビューし、『ヌードの夜』(93)で注目を浴びる。主な出演作は映画『金融腐蝕列島呪縛』(99)『アウトレイジ』(10)『仕掛人・藤枝梅安』(23)、連続テレビ小説「春よ、来い」(NHK)「永遠の仔」(NTV)「コード・ブルー –ドクターヘリ救急救命-」シリーズ(CX)など。放送予定のドラマに「TOKAGE警視庁特殊犯捜査係」(TX)「はぐれ鴉」(テレビ大分)がある。
50歳近く年下の僕が監督をつとめる作品に対して、大先輩である大作さんが熱意を持って取り組んでくれたことが、とても嬉しかったです。「映画っつうのはこうだ!」と改めて、大学で映画を学んでいた頃を思い出すような瞬間もあり、すべてが新鮮でした。
自分が監督として15年ぐらいかけて培ってきたものが、一ヶ月ほどの撮影期間で劇的に変わるわけではないけれど、大作さんとはお互いに歩み寄ることの積み重ねだった気がします。その作業を通して、これまでやってきたことは間違っていなかったんだと再認識できたと同時に、その先に未来予想図が見えたような喜びがありました。
出来上がった作品を観ると、やっぱり自分の映画だなと思うこともあれば、自分が監督したとは思えない部分もあります。ただ、映画というのは実は写っていないものにこそ心が宿っていて、編集しながらも常にそれを感じていました。少なくとも、令和の時代にこの映画を作れる人たちが他にいないということは断言できるので、それに挑ませてもらえたことに感謝していますし、運命だったと思います。
今の世の中で気薄になっているであろう「自己犠牲」の精神が、この映画の中には普遍的に残っています。自分よりも上の世代、あるいは下の世代の人たちに、何をしてあげられるか。それは目に見えないものですが、自分以外の誰かのことを考えて生きる大切さが伝わって、観た人がその心を持って帰る体験になってくれたら、この映画は報われると思っています。
1986年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。
大学卒業後、2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(14)で商業デビュー。以降『青の帰り道』(18)『デイアンドナイト』『新聞記者』(19)『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)『ヤクザと家族TheFamily』(21)『余命10年』(22)『ヴィレッジ』『最後まで行く』(23)『パレード』(Netflixオリジナル)『青春18×2君へと続く道』(24)など精力的に作品を発表。『正体』(24)が第48回日本アカデミー賞にて最優秀監督賞含む12部門13の優秀賞を受賞ほか、映画賞を多数受賞。2025年にはNetflixシリーズ『イクサガミ』の世界独占配信を控えている。
映画100年の歴史の中で名作と言われる作品も、実は過去の作品の模倣の連続であり、その模倣を超えてオリジナリティを生み出している。この作品のショートプロットを読んだとき、これは他人への自己犠牲の物語であり、今までにない新しい映画ができると思った。
キャメラマンとして「映画を撮る」のではなく、「映画を作る」というスタイルを貫き通してきた私は、「この作品は、元ヤクザの漁師が盲目の少年のために自らを犠牲にして光を与える、という限りなく非日常の物語。だからリアリティではなく、叙事として作りたい」という意志を藤井監督に伝え、その意志をベースに、能登半島・富山の素晴らしい場所にこだわって撮影を行った。そこに立つ舘ひろしは、誰かのために生きる男を情感たっぷりに演じ、自分がこの人を一番表現できる位置にキャメラを据えた。
そして、本作の少年役はとても重要だと思っていて、尾上眞秀は映画初出演とは思えない、自然体で豊かな感情表現を見せてくれた。撮影・編集を終え完成した今、キャメラマンとしてこの映画のために全てを懸けた自負がある。
1939年、東京都出身。1958年に撮影助手として東宝に入社し、『野獣狩り』(73)でキャメラマンデビュー。以降、『八甲田山』『復活の日』(80)『駅 STATION』(81)『鉄道員(ぽっぽや)』(99)など数々の作品を手がける。初監督作『劔岳 点の記』(09)は観客動員240万人を超える大ヒットを記録し、日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀撮影賞をはじめ映画賞を総なめにする。2014年に監督2作目『春を背負って』、2018年には監督3作目『散り椿』を公開。2020年、映画監督・キャメラマンの分野では初の文化功労者に選ばれた。
1965年東京都出身。東京藝術大学大学院修士課程首席修了後、国内外を問わず、映像音楽を中心に幅広いジャンルで活躍。これまでに『レッドクリフ』『殺人の追憶』など、80作品以上の映画音楽を手掛けた。近年の作品に、『ヴィレッジ』(23)、『月』(23)、『正欲』(23)、『首』(23)、『ゆきてかへらぬ』(25)、『35年目のラブレター』(25)、『雪風 YUKIKAZE』(25)など。
1965年、福岡県出身。『愚か者傷だらけの天使』(98)で美術監督デビューし、2000年に『顔』『ざわざわ下北沢』で毎日映画コンクール美術賞、藤本賞特別賞を受賞する。主な美術担当作は『北のカナリアたち』(12)『舟を編む』(13)『散り椿』『日日是好日』(18)など。また、「YOIHIPROJECT」を立ち上げ、企画・プロデューサーとして『せかいのおきく』(23)『プロミスト・ランド』(24)を発表している。